ザッカーバーグは問題を払拭できるのか?
10月28日(米国時間)午前に開催したカンファレンス「Facebook Connect」において、Facebook社のCEOであるマーク・ザッカーバーグは社名を変更する意図を明かした。「Facebook」からメタへ、以前から名言していた通り、本格的にSNS企業からメタバース・カンパニーへと変化してゆくつもりらしい。事業転換へ投じる予算は1.1兆円規模とも言われている。登録者数約29億人を抱える世界最大のSNS企業は、徐々に仮想空間へ移行すると宣言した。
しかしタイミングが悪かった。いや、Facebook社としては先手を打ったつもりなのだろう。同社は10月25日、プロダクトマネジャーを務めていた元従業員のフランシス・ハウゲン氏によって内部告発を受けていた。数万ページに上る内部文書を流出させ、同社の内幕をアメリカ議会で暴露した。この告発にはヘイトスピーチや虚偽情報の規制に苦慮している点や、人身売買組織にプラットフォームを利用されている問題、若年層への有害性に関する調査などが盛り込まれている。ザッカーバーグ氏はこれを会見で「恣意的な情報操作だ」と直接否定していたが、米連邦取引委員会(FTC)が内部調査を開始した。
この状況における社名変更であるため、欧米を中心に各所から批判が相次いでいる。テック・カルチャーメディア『WIRED』USの編集主幹、スティーヴン・レヴィはこの件に関してこう述べている。
フェイスブックは30億の人々に“デジタル拡声器”を与えることに見境なく熱中したあげく、危険な言論を深刻な問題にしてしまった。残念ながらフェイスブックは問題の対処を誤り、有害な言論を取り締まるよりも成長を優先した。したがって、フェイスブックにはびこる害悪と嘘のほとんどは、同社の責任である。
そうした中で、28日に同社CEOは華々しくカンファレンスの開催に踏み切った。
発表されたメタバースの世界観は具体的な規模感とビジョンを感じられた
内容としては大いに可能性と未来が感じられるものだった。弊サイトが今日まで述べてきたメタバースの実例や可能性を、最大限研究し、実現しようとしている。1.1兆円という途方もない予算は、仮想現実を限りなくリアルに近づけるためには必要なのだと感じた。日本国内ではグリーがいち早くメタバース事業の開発に乗り出しているが、同社ですら予算規模は100億円だ。
上の動画の論点を大きくまとめるなら以下の3つである。
・リモートワーク/プレイ(エンターテイメント)の更なる拡張
・プロトタイプとしてのゲームの重要性
・新たなプロジェクト/プロダクト制作における協業の可能性
・仮想現実に没入するためのハード/ソフトウェアの開発
いずれも目新しさは感じられなかったが、個人的な印象としては「フォートナイト」や「ポケモンGO」のように限定的でなく、持続可能性(というか生活そのものと接続している)を感じられた。あくまで印象だけで言えば。それだけに今後Facebookがどのような倫理観を持って問題に取り組むのかは注目していかなければならないだろう。
社名変更が問題を覆い隠すものではなく、新しい世界を開くためのポジティブなものになることを祈るばかりである。