色々あった暗号資産は今日も元気に市場を駆け回っている。

暗号資産(ビットコイン)の価格変遷

2018年1月、日本の大手暗号通貨取引所「コインチェック」で約580億円相当の資産が流出した。専門誌/マスメディア問わず、連日センセーショナルに取り上げらていたので多くの人の記憶に残っているだろう。そして、暗号資産(当時でいう仮想通貨)のイメージは地の底に失墜し、ニュートラルに界隈を評価していた人ですらも「それ見たことか!」と囃し立てた。最初から暗号通過に対して懐疑的な見方をしていた人は言わずもがなである。

しかし暗号資産は死ななかった。その後も何度か危機に瀕していたが、これまでにビットコインの価格が2018年1月を下回ったことは1度もない。そればかりか、流出騒動が起きる前よりも遥かに値が高い。2021年5月に中国政府が暗号資産マイニングに対する規制を強化しようが、同年11月にはビットコインの価格が777万円を記録し、史上最高値を更新した。この数字は流出騒動が起きる「前」の3.5倍に匹敵する。

国家予算規模の資産を持つ投資家が裏から市場を操っているのだろうか?あるいは、裏社会とも繋がる政府の陰謀がそうさせるのだろうか?答えはもっとシンプルである。需要があるのだ。週刊東洋経済プラスがメタバース特集の中で明らかにしたデータによると、例えば米国では既に暗号資産が一般市場でも流通しているという。18~29歳の米国人男性の43%は過去に1回以上、投資や決済で暗号資産を利用したことがあるらしい。15年に実施された同じ質問では、この比率は全体で1%だった。

ゲームを中心に、暗号資産を使うユース層

具体的には何に使っているのだろうか?実に多種多様な用途があるが、ここでは大きなマーケットを築くゲーム産業を例に出す。例えば、『メイプストーリー』や『マビノギ』、『アラド戦記』をはじめとするMMORPGを制作するネクソン。同社は昨年4月に1億ドル相当のビットコインを購入したと発表した。さらに同年12月15日、連結子会社のNexon Americaが、米ドルに加えて、暗号資産によるゲーム内アイテムの購入に対応することを明らかにした。

同日付で発表された同社のプレスリリースを引用する。

株式会社ネクソンの代表取締役社長であるオーウェン・マホニーは、次のように述べています。
「Nexon Americaが暗号資産決済の対応を決断したことは、株式会社ネクソンのビットコイン保有とは関係ありませんが、プレイヤーが暗号資産の利用に慣れ親しでいることから当該決済機能の導入に至りました。」

Nexon America Inc.のゼネラルマネージャーであるKenny Chang(ケニー・チャン)は、次のように述べています。
「ネクソンはプレイヤーからのフィードバックに注意深く耳を傾けており、その中にはゲーム内の支払い方法として暗号資産を取り入れることを要望する声が多くありました。この革新的な決済機能をこれよりプレイヤーの皆さまに提供できることを嬉しく思います。」

上でもデータが示したように、ゲーム界隈にははっきりとプレイヤーの意向として暗号資産の価値が現れている。MMORPGに触れたことがある人は、ゲームにおいて暗号資産を求める感覚を知っているかもしれない。筆者も同社のゲームをいくつかプレイした身として、アイテムをカジュアルに購入する場合は暗号資産を使用するほうが“楽”に感じられる。さらに今後“Play to Earn”の一般的になれば、暗号資産を獲得する方法も多様化してゆくだろう。

とりわけメタバース界隈では、NFTと暗号資産はセットで語られる場合が多い。ブロックチェーン技術を用いて、アートやゲームアイテムのデータに作者の情報などを書き込んだNFTは、さながら偽造や複製が困難な唯一無二の鑑定書である。無論、そこへ暗号資産の情報を紐づけることも可能だ。RTFKTのNFT製品や『悪魔城ドラキュラ』をモチーフにしたNFTが高額な値段で取引されている理由の半分は投機だろうが、そもそも投機する理由は将来性があるからである。

そしてメタバースに関する盛り上がりは、このサイトでも度々指摘している通り、やはりMMORPGから始まりそうな気配がある。小~中学生の頃にPC越しにサードプレイスがあった者たちよ、そう感じはしないか。