強力なIPを保持する会社やメーカーが続々とメタバースへ参入
英国発のラグジュアリー・ブランド「Burberry」がブロックチェーンゲームの『Blankos Block Party』と手を組み、同ゲーム上で新たなコレクションをローンチしたのは今年の8月だった。このコレクションは、動物をフィーチャーしたポップアップイベント “BURBERRY ANIMAL KINGDOM”からインスパイアされ、“Sharky B”と名付けられた最新のTBサマーモノグラムで覆われたバーチャル上のNFTとして誕生。Blankos Block Partyにとってはこれが初めてのラグジュアリーブランドとのコラボレーションであり、ファッションとゲームの世界が交錯する新しい時代を象徴したプロジェクトとして世界中から注目を集めていた（発売と同時に30秒でソールドアウト）。
『Blankos Block Party』の開発を手掛けるのは、ブロックチェーンゲームメーカーとしてはスタートアップの部類に入る「Mythical Games」である。このゲームのプレイヤーは巨大なブロックパーティーのような活気に満ちた世界で、フレンドたちとミニゲームで競い合い、“ブランコス（Blankos）”と呼ばれるビニール人形を集めて合体させることで、NFTを獲得できる。「マリオパーティ」や「Fall Guys」のようなパーティゲームに、“Play to Earn”の仕組みを取り入れたコンテンツだ。ゲーム内で手に入れたNFTは、プレイヤー同士で自由に取引できる。ちなみに、先述した「Burberry」とのコラボNFTは現在1200ドル程度で売買されている。
かつて「Second Life」でもあったように、企業やアーティストが仮想空間上で作品や商品を展開し始めている。オンラインゲーム/メタバース・プラットフォームの「Roblox」は、9月に“House of Vans”のようなスケート場を模したインタラクティブ・スペース「Vans World」を開設した。プレイヤーは友達と一緒にオーリーやキックフリップを練習できる。
既にIPを持つ企業や組織、アーティストは引き続きバーチャル世界でも大きな影響力を持っている。しかしその“使い方”については、大きな論点として考えなければならないだろう。
ユーザーは何か特定のキャラクターになりたいわけではない
…その可能性はないだろうか。
来る12月4日(土)～12月19日(日)にVRChat上で開催される『バーチャルマーケット2021』には、多くの企業が出展する。コンビニ業界から株式会社ローソン、証券業界からＳＭＢＣ日興証券株式会社、テレビ業界から株式会社テレビ朝日、ファッション業界からはBEAMS…。“メタバース・シティ”をテーマに、世界最大規模のVRプロジェクトが『パラリアル渋谷』と『パラリアル秋葉原』を舞台に展開される。
本イベントには、人気格闘ゲーム最新作『GUILTY GEAR -STRIVE-』も参加する。「パラリアル秋葉原」内に同ゲームをイメージしたブースが登場し、ギルティギアシリーズの人気キャラクター・メイの衣装がアバターの着せ替えアイテムとして出現。アイテムを購入したユーザーは、自由に衣装チェンジができる。また、アンケートに答えるとイベント期間限定アイテム『ラムレザル』デザインの帽子も入手可能だ。
つまり、メーカー側はユーザーがキャラクターそのものになることは想定しておらず、あくまで記号的な意匠をまとうことに価値を見出しているのだ。考えてみれば、先日人気アニメ「NARUTO」とのコラボレーションを発表した「Fortnite」も、実装されたのはキャラクターの“スキン”であって、ナルトやサスケになれる権利ではない。そもそも、ユーザー側がそれを欲していない可能性がある。まだ深く語られていないが、この点はメタバース以降のIPを考える上で重要なテーマになりうる予感がある。
「Burberry」と「Vans World」も、この点では一貫しているのではないだろうか。現世界と同じように、IP強者はメタバースでも覇権をとる可能性はあるが、現世界とはまた違った形であるように思われる。
【バーチャルマーケット2021開催概要】
主 催：VR法人HIKKY
会 期：2021年12月4日(土)～12月19日(日)（計16日間）
テーマ：メタバース・シティ
企業出展会場：パラリアル渋谷／パラリアル秋葉原
公式サイト：https://winter2021.vket.com/
来場方法：
VR機器・ゲーミングPCからはVRChat内特設ワールドにご来場いただけます。
