ホロライブのメタバース・プロジェクト「ホロアース」が明らかに

ホロライブ・オルタナティブ始動から8か月、ついにゲーム部門に動きが

大手VTuberグループ「ホロライブ」に所属するタレントたちの異世界創造プロジェクト“ホロライブ・オルタナティブ”が今年の2月にローンチした。漫画やアニメ、ゲームといったメディアミックス作品を順次展開すると明言されていたが、当初のゲーム部門は謎が多かった。他2つに関しては既に作品化されており、国内外のファンを賑わせている。

参考: Holoearth Chronicles Side:E ヤマト神想怪異譚 第0話

そして2021年10月21日、ついにゲーム部門の開発状況が明らかになった。筆者含め、多くのファンが「ホロライブはMMORPGを制作しているのでは」と推察していたが、その具体的な内容が明かされるのは今回が初めてである。その名も「ホロアース」。ホロライブ・オルタナティブのメインプロダクトと位置付けられており、オープンワールドのデザインで開発されたメタバースだ。以下、同日付でホロライブを運営するカバー株式会社からリリースされたニュース記事より。

メタバースプロジェクト「ホロアース」は、いくつかのサブプロジェクトに分かれて開発を進行しています。

▶︎「サンドボックス・ゲーム」
オープンフィールドで、「冒険」や「生活」をしていく、プレイヤーの数だけ物語が存在する、そんな体験をめざしたサンドボックスゲーム開発プロジェクトです。モンスターと戦ったり、自分だけの家づくりをしたり、様々な生き方を、ホロアース内で体験できます。

▶︎「コミュニケーションロビー」
ホロアースの入り口であり、たくさんの人たちと出会い、会話することのできる広場を作ります。サンドボックスへと一緒に旅立つ仲間を集めることもできます。また今後、この空間で、様々なイベントの開催などを目指しています。

▶︎「アバタークリエイトシステム」
ホロアースに旅立つ皆様の、身体(アバター)を提供するためのアバタークリエイトシステムの開発を行います。この身体(アバター)は、冒険や生活のなかで、衣服や装備品・装飾品などを自由に身に着けたり、着替えたりすることができます。

ホロアース
カバー株式会社 メタバース の求人ページより
同上
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大方の予想通り、いや、予想以上にMMORPG的だ。フォートナイトが2020年4月に実装した「パーティー・ロイヤル」的な側面もある。すなわち、冒険や戦闘のない“ユーザーのプレゼンスのみ”を提供する電脳空間である。ホロアースのコミュニケーションロビーは、そういったゲームデザインなのではないだろうか。モンスターとの戦闘(あるいは使用キャラクターの強化)を目的としない、そこにいて他者との繋がりを実感するスペース。パンデミック以降、メタバースは急ピッチで開発を進められているが、最も切実なテーマが“双方向かつ多次元的なコミュニケーションの実現”であると思われる。それはつまり、リアルワールドのバーやライブハウスで見られるような、お客さん(オーディエンス)同士の関係によって成り立つものだ。

「ホロアースのこれから」として、先のニュース記事はこう続く。

最終的には、現在存在するサブプロジェクトを全て統合する形で、1つのサービスとして皆様にお届けする予定です。対応プラットフォームはPCが先行する形となりますが、後を追う形でモバイル版への対応を予定しています。開発期間は1年〜2年を予定していますが、各サブプロジェクトごとにアルファ/ベータテスト、アーリーアクセスなどの手段でなるべく早く、皆様の手にお届けできるよう検討をしております。今後も、継続的に開発進捗などをお伝えしてまいりますので、楽しみにお待ちいただけますと幸いです。

カバー株式会社 メタバース の求人ページより

VTuberの立ち位置(あるいはコンセプト)の転換

凄まじい勢いで成長するバーチャルコンテンツ市場だが、パンデミック以前/以降で比較すると大きな違いがあるように思われる。VTuberの始祖・キズナアイが何を標榜して台頭してきたのか覚えているだろうか? 彼女は“人工知能”なのだ。「あなたとつながりたい」と自我の芽生えたAIが、VRなどの先端テクノロジーと人間の架け橋になろうと日々奮闘する物語が描かれていたのである。以降、彼女はYouTubeチャンネルにおける配信番組の制作やライブパフォーマンスに邁進してゆく。

「ホロライブ」や「にじさんじ」に所属するタレントは、より具体的な“ライバー”なのである。そこへパンデミックがやってきて、“メタバース”がバズワード化してゆく社会ができた。すなわち、この1年半のVTuber界隈において、AIからメタバースの住人へのパラダイムシフトが起きたのである。意外と話題にされることが少ないが、このコンセプトの転換はVRを含むバーチャルコンテンツを考える上で非常に重要な論点なのではないだろうか。