【連載:SDGs】VRで福祉サービスの多様化を実現

VRで福祉サービスの多様化を実現

VRで福祉サービスの多様化を実現

人生100年時代と言われているように、日本人の平均寿命は年々伸びています。
生活レベルの向上や医療の発達により、長寿に繋がっている見方もありますが、人間の寿命と健康需要が必ずしも同じというわけではありません。
高齢者の人口率の増加に伴い、福祉サービスの在り方が課題となっています。
いくら長生きできたとしても、病院に寝たきりの生活や、精神的に弱ってしまっている状況では、本来の健康とは言えず、日本においても福祉サービスの推進は必要です。
SDGs3番目の目標には、「すべての人に健康と福祉を」が掲げられおり、あらゆる年齢のすべての人の健康的な生活を確保し、福祉を推進するための取り組みとされています。
健康とは、単に体が丈夫であることだけではなく、精神的にも社会的にも確立できる状態で、さらに幸福を感じられることに意義があります。

現在では、健康を維持するために、様々な福祉サービスが展開されるようになりました。

新しい福祉を支えているものの一つがVR技術です。そこで今回は、VR技術を通して、福祉の多様化を実現させている事例を取り上げていきます。

福祉サービスとVRの相性

VRと聞くと、エンタメやゲームなどと関連づけられることが多いですが、福祉の現場でも活躍しています。
福祉は受ける側だけでなく、提供する側のサポートが必要不可欠です。しかし、福祉業界においては深刻な人手不足や、日常的に目を向けてもらいにくいという問題があります。

そこで力を発揮するのが、VR技術です。

バーチャルでの体験は、人々の想像力やコンテンツの理解を深めることに繋がり、福祉サービスとの相性がとても良いとされています。
福祉を受ける側のリハビリを加速させる効果や、福祉従事者だけでなく、一般の人にも福祉の理解を深めるきっかけ作りをもたらしています。

一人称として認知症を体験できる「VR Angle Shift」とは


株式会社シルバーウッドは、認知症を体験することのできるVRサービス「VR Angle Shift」を提供しています。
「自分がその立場だったら、どのように感じるのか」と、他者の視点を体験することのできるVRサービスです。
認知症は身近な病気である反面、当事者でなければ認知症のリアルを想像することは簡単ではありません。
しかし、VR Angle Shiftで自ら認知症を体験することで、身近な人が認知症になった時に、どのようにサポートしていくべきかヒントを得ることができます。
認知症の人が抱く感情や、見ているもの、示す行動に、どのような意味があるのか理解に繋がり、よりその人の人生に寄り添えることにもなります。
また、認知症を学ぶことだけでなく、自分らしい人生のあり方を考えるきっかけにもなるのがVR Angle Shiftの魅力です。
いざ一人称で認知症を体験すると、他人事に見えていたことが、自分の人生に置き換わります。自分が将来認知症になったら、どのような人生を送りたいか、周りの人に何を伝えたいかなど、持っていなかった想像力が生まれるからです。
VR Angle Shiftは、認知症の人との新しい関係づくりの糧となるのではないでしょうか。

施設にいながら複数人で特別な経験を共有できる「RENDEVER」とは

アメリカ発の「RENDEVER」は、社会共有型のVR福祉サービスとして注目を浴びています。
RENDEVERは、福祉施設で暮らしている高齢者向けに開発され、部屋にいながらでも様々なアクティビティを体験することができます。コンテンツは、世界旅行やスポーツ体験、音楽鑑賞など多種多様です。
高齢になると、若い頃に比べて、体が思うように動かなくなり、気持ちが内向きになりがちです。
しかし、RENDEVERはバーチャル上で普段行けないような場所に行くことや、会えないような人に会うことを実現させ、高齢者の幸福感を向上させます。
さらに、このバーチャル体験では、自分の足で現地に行き、自分の目と耳で現地を感じたいという想いに応えることができ、高齢者本人のリハビリ意欲を促進させる効果も発揮します。
また、複数人で体験が共有できるため、施設内でも自然と新しいコミュニケーションが生まれ、感動や楽しさを分かち合えることもRENDEVERの良さです。
コミュニケーションが生まれると、社会的に孤立を感じることが少なくなり、最終的に認知機能の活性化に繋がっていると実証されています。
こうした社会共有型のVRサービスは、高齢者が健康に生きていく上で重要な役割を果たすと言えるでしょう。

福祉の多様化が健康的な人生に繋がる

VR技術は若者が楽しむエンタメ的な要素だけではなく、福祉の分野にも大きく貢献します。
高齢になっても自分らしい人生を歩むには、健康と福祉の多様化が求められます。
今回紹介した2つの事例のように、VR技術の実績が証明されてくると、今後さらに多くの福祉の場でVRの需要が進むのではないでしょうか。