バーチャル原宿に行くまえに… -エンターテイメントにおけるVRの論点を整理-

エンターテイメントにおけるVRの論点

渋谷区公認の配信プラットフォーム「バーチャル渋谷」が1周年を迎えたことを記念して、神宮前交差点を中心としたバーチャル空間の新エリア「原宿」をオープン。5月25日(火)から原宿カルチャーと最先端テクノロジーをミックスしたコンテンツを仮想空間で楽しめる「バーチャル原宿 au 5G POP DAY OUT 2021」が開催中だ。

その最終日、5月31日(月)は「DJ IN THE MIRROR WORLD VOL.2」と題して、宇川直宏のライブ配信スタジオ「SUPER DOMMUNE tuned by au 5G」主催のバーチャル・オープンエアパーティが行われる。

バーチャル渋谷以降、拙筆ながらエンターテイメントにおけるVR空間についていくつか記事を書いた。そこで今後の論点になり得そうなことを何点か挙げたのだが、たとえば音楽メディア「BARKS」では、筆者はこう述べている。(現状のVR空間ではMMORPGのルールやマナーが基調となると仮定した上で生じる利点と問題点について)

まずは距離の無効化だ。県境をいくつも超えて野外フェスティバルに行く。それはそれでひとつの楽しみであるが、経済的に独立していない中高生もネットに繋がってさえいれば参加できるのは、フェアで良い。フェスにもよるが、複数日にフルで参加すれば10万円をたやすく超える。仮想空間へのアクセスにいくらか発生したところで、金額的なハードルはだいぶ下がるはずだ。

そしてコミュニケーションに関して。吃音やチック症など、対面よりもテキストベースのコミュケーションのほうがベターなケースも存在する。単純に文章のやり取りのほうが得意な人もいるだろう。余談だが、筆者も「文章“では”面白いね」と言われたことがある。しかしそれらの利点は、そのまま問題点に直結してしまう。ディスクレシア(読み書きに著しい困難がある)を抱えている人もいるだろう。対面がテキストに、テキストが対面に変わるだけでコミュニケーションの難易度が変わってしまう。

バーチャル渋谷の模様

今振り返ると、主眼を置かなければいけないポイントは、この見方よりもずっと手前にあったように思う。たとえば、昨年11月10日に実施されたカンファレンスプログラム「渋谷5GエンターテイメントプロジェクトNETWORKING」にて、KDDIの繁田光平(パーソナル事業本部・サービス統括本部5G・xRサービス戦略部部長)はこう発言していた。

ライブ後はアプリを閉じれば終わりだが、「ここからどうやって退出したらいいですか?」という書き込みが必ず出る。「右上のボタンを押せば退出できます」って書くと、右上を見る。つまりバーチャルに入り込んでしまっているので、右上が画面のではなく空間の中。後に退出する出口があれば、自然と後ろを向いて向かっていく。没入しているとリアルとバーチャル、どっちがどっちだか分からなくなる人が大勢いたというのは、イベントのオペレーションを含めて工夫していかねばならない。(Real Sound 「バーチャル渋谷が生んだ手応えと課題ーー次の転換点は「ストーリージェネレーター化」にあり?」より引用)

“『レディ・プレイヤー1』や『.hack』よろしく、リアルとバーチャルの差分は曖昧になり、アバターが持つ情報量が我々の実体を凌駕する時代が来る!”…と息巻く人(自身を含む)が散見されたが、それはもう少し先になりそうだ。筆者がBARKSで挙げたメリット・デメリットは、多くの人がVRの世界に触れてからだろう。

“VRはコロナ禍に限った局地的なムーブメントでは?”との指摘もあり得そうだが、必ずしもそうではない。先日、弊サイトで言及した「Tobacco Dock Virtual」の関係者は、パンデミック収束後も開発は続けると明言している。UKのクラブカルチャー誌「Mixmag」が実施したインタビューで、Tobacco Dock Virtualを企画したPaul Jackはこう語っている。

長期的な計画に基づいて何かをしたいと考えていたので、現在僕らが使わせてもらっているイベントスペースのひとつ「Tobacco Dock」で何ができるか、そしてそれをどのようにしてデジタル・フォーマットに変換できるかというアイデアに惹かれたんだ。しかし同時に、純粋なデジタルイベントではなく、長期的なビジョンとして、リアルとバーチャルの両軸が存在できるものにしたいと考えている。これこそが、Tobacco Dockの正しいアイデアなんだ。

そもそも、“MIRROR WORLD”というフレーズがxR界隈でホットワードになったのは、パンデミック以前の話だ。WIRED誌が「MIRROR WORLD #デジタルツインへようこそ」とタイトルを打った号が、2019年6月に刊行されている。

バーチャル渋谷(原宿)は、規模で考えれば国内で最大を誇る。エンターテイメントに限らず、様々な領域に影響がある試みと言えよう。来週のイベントには、様々な角度から注目してもらいたい。何せ、DJも本当に素晴らしいラインナップなのだし。


■ SUPER DOMMUNE Presents DJ IN THE MIRROR WORLD VOL.2
2021.05.31 (Mon.) 21:30-25:00
<イベント詳細>
https://vcity.au5g.jp/harajuku/dj-in-the-mirror-world-vol2